鉄骨優先か、配管優先か
プラントの施工の難しさや大変さ、面倒臭さは私もよく分かっている。それを1つの業者に任せたほうが良い!と決めるのは分かるが、配管作業優先で進める業者に、鉄骨作業も任せてしまおう!と簡単に思ってしまうところに大きな落とし穴がある。
彼らは配管に関しては専門家だが、鉄骨の構築に関しては「ただ組み上がれば良い!大切なのは、中を通る配管であって、鉄骨は単なる構造体にすぎない!」としか思っていない。そう思って出来た鉄骨の精度は、どうしても落ちる。実際の作業にあたっているのは、鉄骨の構造体構築の専門家ではないからだ。
もちろん鉄骨は専門業者が製作・搬入し、当初は鉄骨専門の職人が組み立てを行うが、徐々にその手は配管作業員中心に移行していく。落とし穴は、構造体骨組みの出来は二の次で、良質な溶接を要求される配管溶接を優先させ、建築が専門ではない業者に全部を任せているということだ。
鉄骨の主要な柱と梁が組み上がったところに、大口径の配管類を鉄骨の柱と梁の間に落とし込み、外部からレッカーで吊りながら、あるいは下部の鋼材に仮止めしながら、その次に鉄骨業者が梁部材をボルトで締め、水平垂直を確認し、次の階に移ってから、吊っていた大口径配管をチェーンブロックなどで上部梁から吊り下げる。
この工程は、非常に面倒で危険を伴う作業だ。しかし、大口径配管の仮の据え付け作業が終わるまで、鉄骨組み立ての鳶連中を拘束し続けるわけにはいかない!と考え、共通の手で両方やろうと考えるのも無理ないと思う。
建築の人間の視点からだと、品質を保つためには鉄骨の仮組みだけでも、どの順番でどの部材を楊重してどう繋げていくか、補助ワイヤーや仮締め・本締めの順番等、まずは優先事項は鉄骨で配管類はその次のハズだが、プラント工事では、7対3くらいの割合で配管のほうが重要視されている。
柱脚のアンカーボルトが正確でさえあれば、後は鉄骨が精度良く出来ていて、ボルトの孔があれば何とか繋ぐことが出来る。鉄骨間は、部材と部材が10の空きを確保するよう設計されているので、その範囲内であれば組み立ては出来る。
ボルトの締め付けなどのルールに従って、仮締め、マーキング、本締めさえ出来れば、大まかな組み立ては完成するが、鉄骨の精度はイマイチだろう。それは、鉄骨構造体に階段・手すり・床のグレーチングを設置した時にハッキリ分かる。
一見同じに見えるが中身はまるで違う
プラントは、鉄骨むき出しの中に機械や電気の大小様々な配管が縦横に走っていて、住宅などとは違い、最後に外壁を取り付けるわけではない。おそらくそれが、鉄骨の組み立ての精度を厳しく求めない理由だろう。
それゆえ、目立たないことだが、鉄骨の外面が揃うことを求められていない。これは単純なことだが、建築関係者の意識とは決定的に違う。
建築の人間であれば、半ば無意識のうちに外壁やカーテンウォールのことを考え、鉄骨の外面が揃うことを最優先として施工を考える。
プラント関係者は、そんなことは当たり前の如く一切考えていない。そもそも、鉄骨の組み立ての精度は求められていないからだ。これは言葉で書くと両者にとって普通のことだが、決定的な違いを表している。
私自身が建築の人間だから、そんなことを考えるのだろう。ここの現場でそんなことを考えてるプラント関係者は、恐らく誰もいない。プラント建築と一般建築の鉄骨構造は、構造体構築の段階を見ると一見同じに見えるが、その中身はかなり違う。