世界中で新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が蔓延し、私たちは新しい局面を迎えています。飲食業などを中心に各業界に大打撃を与えたコロナですが、建設業界には一体どのような影響を与えているのでしょうか?今回は「建設業×コロナ」について考えていきます。
建設現場でのコロナ対策
コロナの感染拡大が始まったころ、他業界に比べると建設業は多くの現場がそれまでと同じように動いていました。他業界ではテレワークやリモートワークが導入されて働き方改革が進められましたが、建設に関しては「家にいなが工事をする」といったことができません。そのため、クラスターを発生させないよう、さまざまな工夫をこらしながらこれまで通りの作業を続けていきました。
現場で行われた工夫の一例が、アルコール消毒やマスク着用徹底です。現場に入る前はもちろん、定期的に手や体を消毒し、「感染しない、させない」この両方に気を付けて工事を行っています。また、機械化できる部分は機械化を進めました。生コンクリートを練る作業など、人を介さなくてよい作業はなるべく機械だけで完結させるようにしています。
そして、三密を避けることにも注力しています。これまでは現場でひざを突き合わせ話し合っていたことも、チャットやビデオ通話ツールなどを駆使しています。手書きをしていたメモや図面なども、タブレットなどを用いてデータでやり取りしているのです。これにより、離れた場所にいながら進捗確認やミーティングすることが可能になりました。
現場以外でのコロナ対策も進む
建設業界では現場以外のコロナ対策も進められています。例えは現場で作業する方も、仕事終わりには一度会社に戻って書類作成などの事務作業を行うのが通例です。これでは会社に人が集まってしまいますし、現場から直帰するより移動距離も増えて感染リスクが増えてしまいます。
こうした慣習を変えるため、ICT化を進めています。特に経費精算は領収書を紙でもらうといった状況のため、なかなかアナログなやり方から脱却できていませんでした。しかし最近では法律の改正により、国税庁が電子証明を認め始めています。
例えば、タイムスタンプなどがおされていれば、カメラで撮影したものも取り扱い可能になっているのです。これなら現場の人間も、経理担当者もリモートでの業務ができるようになるでしょう。
また、現場の方の健康管理も本格化しています。アプリなどを使って一人ひとりの体温や体調を管理し、データとして保存。何かあれば過去の情報もさかのぼってチェックできます。建設業界では一人親方という働き方をする人が多く、社員として雇用されているわけではないのでなかなか細かいところまで目が届きにくい部分はありますが、コロナ過はこうした体調管理など細かい対応が求められます。
今後の建設業界とコロナ
当初は以前と同じように現場が稼働していた建設業界ですが、時間が経つにつれて少しずつ変化が現れてきました。例えば大林組では一部地域で施工中断を協議し、清水建設では緊急事態宣言中は特定の都道府県で作業所を閉所しました。
一人親方は現場が動かなければ、補償などもなく売上低減に直結します。人によっては生活が立ちいかなくなることもあるでしょう。こうした事態の中で、各企業はICT化などの工夫を進めて乗り切ろうとしています。
これまで他業界に比べてアナログな面が目立っていた建設業界ですが、コロナを受けて効率化やシステム化が進むことでしょう。その波に乗り遅れないよう、デジタル化の第一歩を踏み出すべき時が来たのかもしれません。